松永 久秀（まつなが ひさひで）は、戦国時代の武将。大和国の戦国大名。官位を合わせた松永弾正（まつなが だんじょう）の名で知られる。父母は不明。弟に長頼、嫡男に久通、養子に永種（貞徳の父）。

初めは三好長慶に仕えたが、やがて三好家中で実力をつけ、室町幕府との折衝などで活躍した[1]。久秀は長慶の配下として振る舞うと同時に交渉の一環として義輝の傍で活動することも多く、その立場は非常に複雑なものであった[2]。長慶の長男、三好義興と共に政治活動に従事し、彼と全く同時に官位を授けられるなど、主君の嫡男と同格の扱いを受けるほどの地位を得て活躍した[3]。

長慶の死後は三好三人衆と時には協力し、時には争うなど離合集散を繰り返し、畿内の混乱する情勢の中心人物の一人となった。織田信長が義輝の弟・足利義昭を奉じて上洛してくると、一度は信長に降伏して家臣となる。その後、信長に反逆して敗れ、信貴山城で自害して果てた。その死について、文献上では日本初となる爆死という方法で自害したと現代では言い伝えられている[4][5]が、これについても事実であったかどうかは定かではない[6]。

室町幕府第13代将軍・足利義輝を永禄の変で殺害したと一般には言われている[7]が、実際には義輝暗殺に荷担したのは息子の松永久通であった[8]。

斎藤道三・宇喜多直家と並んで日本の戦国時代の三大梟雄とも評されている。「下剋上の代名詞」[9]、「謀反癖のある人物」[10]などのイメージを一般には抱かれており[11]、小説を始めとした創作においてもそのような人物として描かれることが多い[12]が、こうした「乱世の梟雄」としての久秀のイメージは、後世に成立した『常山紀談』などを典拠として成立したところが大きく、[13]事実からは乖離している。

主君である三好長慶の存命中は、目立って長慶に謀反を起こしたり専横をしたことは一次史料からは確認できず、長慶に忠実であった[14]。また長慶の嫡男三好義興、長慶の弟十河一存を毒殺、暗殺し、長慶の弟安宅冬康を讒訴して長慶に殺させ、三好政権を崩壊へと導いたと言われるが、これらの情報も、多くは軍記物などを典拠としたもので、信憑性に乏しい[15]。

茶人としても有名であり、その最期において茶道具『平蜘蛛』と共に爆死するなど、印象の強いエピソードを多数持ち、後世においては「大変な数奇者」[16]などと称されるが、そうしたエピソードの多くは、江戸時代以降に造られた創作である[17]。