割安な運賃を武器に、大手航空会社から客を奪い成長してきたスカイマーク。1990年代後半の規制緩和で生まれた新興エアラインの元祖が、創業以来で最大ともいえるピンチに追い込まれようとしている。
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スカイマークは7月29日、欧州の旅客機メーカー、エアバスから超大型旅客機「A380」の購入契約を解除すると通知された。国際線への参入を狙って、当初は2014年内の導入を目指してきたが、急激な業績悪化に伴って支払い能力が低下。エアバス側と当初の購入計画を変更する方向で4月から協議を続けていたが、両社の条件が折り合わなかったことが要因だ。
■ 契約解除通知に至った経緯
スカイマークはA380を6機購入する契約をエアバスと結び、2014年10月から2019年12月までに順次受け取る予定だった。だが、4機の購入を解約したうえで、すでに製造に入っている2機の導入時期についても先延ばしにすることをエアバスに打診した。
エアバスは代金回収の不安を払拭するため、契約変更の条件としてスカイマークが大手航空会社の傘下に入ることを提案した。が、スカイマークが拒否したため、契約解除の通告という強制措置に踏み切った。
スカイマークは交渉の継続を求めているものの、エアバスが態度を変えなければ、支払い済みの265億円が戻ってくる可能性は低い。それどころか、700億円規模の違約金支払いを求める損害賠償訴訟を起こされる可能性すらある。
実は、“兆候”は以前からあった。スカイマークが5月15日に発表した2014年3月期の決算短信には、今年度(2015年3月期)業績予想の下に、こんな注記が付されていた。「国際線の参入を予定しておりますが、変動要素が多いため、国内線に係る業績予想のみを開示しております」。
そもそも決算発表は当初、5月8日を予定していたが、1週間ほどズレ込んでしまった。この文言を入れるかどうかについて、監査法人から指摘が入ったためだ。国際線やA380についての注記は、業績予想に関連してだけではなく、「事業等のリスク」の欄にも9行にわたって記載されている。
■ 資金計画に生じた狂い
A380は6機合計の発注額が約1900億円。購入することを決めた2011年当時、スカイマークは20%近い営業利益率をたたき出し、最終損益も63億円の黒字。資金計画はこのころの業績を基に策定したものだったと見られる。
ところが、急激な円安に伴う燃油費の上昇に加えて、ジェットスター・ジャパンやバニラ・エア(旧エアアジア・ジャパン)など、スカイマークをさらに下回る運賃の格安航空会社(LCC)が台頭。復活を遂げたJALの攻勢などもあり、スカイマークの本業は苦戦している。
2014年3月期は18億円の最終赤字と、2009年3月期以来、5期ぶりの赤字に転落した。こうした本業の苦戦に加え、A380の前払いで支出がかさみ、フリーキャッシュフローは大幅なマイナス。期末時点の現預金は70億円と、1年前の231億円から激減していた。
この先も赤字が続けば、資金ショートのおそれすらある。そうした窮状が、A380の導入計画変更をエアバスに打診することにつながったのだろう。
エアバスとの騒動は2つの意味で、スカイマークの不安材料になる。
1つは多額の違約金だ。裁判や交渉の行方次第ではあるが、収益力が低下した今のスカイマークにとって、最大で700億円規模になる損害賠償金は経営の重大なリスク。加えて不安なのが、スカイマークが羽田―福岡線を皮切りに運航を始めたエアバス製の中型機「A330」の導入計画にも影響を及ぼしかねない点だ。
スカイマークはA330を2016年3月期までに計10機導入する計画で、これまでに3機の引き渡しが終わっているようだ。ただし、エアバスがA380に対する支払い能力を疑問視している以上、A330についても今まで通りの供給がなされない可能性はある。
A330は期間限定のミニスカートワンピース制服が話題になったものの、本質的には座席幅が広く、ゆったり座れる「グリーンシート」を配しているのが特徴。いち早く羽田―福岡線に導入したグリーンシート搭載機は今のところ搭乗率が順調で、この戦略はユーザーにも受け入れられている。もし、エアバスとのトラブルでA330の供給に影響が出ると、スカイマーク唯一の反撃材料が薄れ、収益回復シナリオも狂いかねない。
■ 最大の魅力は羽田の発着枠
スカイマークはエアバスの提案を拒否したように、大手航空会社には頼らずに独立路線を保ちたい意向だ。航空運賃の低価格化に貢献してきたという自負がある。しかし、スカイマークにとっての最悪シナリオが進行すると、大手の傘下に入るという選択肢はまったく非現実的でもなくなってくる。
大手航空会社にとって、スカイマーク最大の魅力は羽田空港の発着枠だ。現状、羽田に空き枠はない。どの航空会社ものどから手が出るほど欲しいところに、スカイマークは36枠も持っている。
スカイマーク獲得の候補となる大手航空会社がいるとすればどこか。日本航空(JAL)は国土交通省が2012年8月に公表した「日本航空の企業再生への対応について」(通称「8月10日ペーパー」)によって、中期経営計画が終わる2016年度(2017年3月期)までは新規投資を抑制されており、身動きは取れないだろう。
全日本空輸(ANA)による救済はありえる。発着枠の扱いは国交省の裁量次第だが、ANAが救済するとしたら、スターフライヤー、AIRDO、スカイネットアジア航空といった、ほかの新興エアラインと結んでいる共同運航(コードシェア)などよりも一歩踏み込んだ関係となるかもしれない。
■ 大穴は東南アジアのあの会社
海外の航空会社はどうか。航空法では、外資が日本の航空会社に出資できるのは3分の1(33.3%、議決権ベース)までとしている。米国大手3社のうち、デルタ航空は関心を示しているかもしれない。
アメリカン航空はJALが加盟するワンワールド、ユナイテッド航空はANAが入るスターアライアンスという国際アライアンスを組んでおり、運航やマイレージなどで日本の航空会社と連携している。対して、デルタが属するスカイチームには日本のパートナーがいない。
大穴は、マレーシアを地盤とする東南アジア最大級のLCC、エアアジアグループである。ANAとの合弁を解消して、日本の国内線から一時撤退していたエアアジアは、楽天やノエビアなどと組み、新生エアアジア・ジャパンを設立。日本市場への再参入をもくろんでいる。将来的には羽田で発着枠の獲得に意欲を燃やしており、スカイマークを獲得することで羽田参入が実現すれば仰天のシナリオになる。
スカイマークが夢見た国際線の参入。それを叶えるための“背伸び”によって、逆に自らの首を絞めかねなくなっているのは、何とも皮肉である。
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